治療から逃げ出した患者を、責められますか

医療者の良かれと思っての勧めが、患者を追いつめることも
廣橋猛 2026.07.11
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皆さん、こんにちは。

一気に夏らしく暑くなりましたね。痛みに関してだけ言うと、寒いよりも暑い方が楽という方もいるのですが、急激な気温の変化は体調を崩しやすく、またいわゆる夏バテも心配です。どうぞお大事にお過ごしください。

治療は言われるままに進んでいく

がんと診断された日のことを、想像してみてください。

医師から病名を告げられ、間を置かずに、治療の説明が始まります。手術の日程、追加の検査、次の予約。ひとつ決まれば、また次。まるでベルトコンベアに乗せられるように、話がどんどん進んでいきます。

多くの方は、「そういうものだ」と受け止めて、その流れに乗っていきます。強い不安を抱えながらも、医師を信じて、一歩ずつ進んでいく。それは、とても大切なことです。

でも、全員がその流れに乗れるわけではありません。

人には、それぞれのペースがあります。頭では分かっていても、心が追いつくまでに時間のかかる人がいます。がんという大きな出来事を、自分の中で受け止めるのに、人一倍の時間を必要とする人がいます。それは、その人が弱いからではありません。ただ、そういうものなのです。

医療者は、良かれと思って勧めています。少しでも早く治療を。少しでも正確な診断を。その善意に、嘘はありません。私自身も、そう信じて、たくさんの検査や治療を患者さんに提案してきました。

ただ、善意が、誰にとっても優しさになるとは限らないのです。

私も、頭が真っ白になった

実は私自身、甲状腺がんと診断されたとき、頭の中が真っ白になりました。

私は、がん治療に長く関わってきた医師です。治療の流れも、術後の経過も、だいたい予想がつきます。患者さんには「こうしたらいいですよ」というアドバイスが、いくらでも思い浮かびます。

それなのに、いざ自分のこととなると、まるで勝手が違いました。考えなければならないことが次から次へと押し寄せてきて、うまく処理できなくなってしまったのです。

仕事はどうする。家族にどう伝える。治療はいつから始まる。医療費はどれくらいかかる。

ひとつずつなら答えられるはずのことが、まとめて押し寄せると、途端に手に負えなくなる。

医師である私ですら、そうでした。

では、初めてがんと向き合う患者さんは、どうでしょうか。正しい情報にたどり着くのも難しい。先の見通しも見えない。そんな中で、次から次へと決断を迫られていきます。追いつけなくなって、当然ではないでしょうか。

そして中には、その流れにどうしてもついていけず、自分の気持ちを処理しきれないまま、治療から逃げ出してしまう患者さんもいるのです。

私たち医療者は、その人を・・・「治療から逃げ出した患者」を、いったいどんな目で見ているでしょうか。

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