末期がんの患者を"欲しがる"在宅医が増える?制度改定の意外な副作用
皆さん、こんにちは。
最近、学会が続いたり、ずっと休みがなかったので、北海道での学会の帰りに1日だけお休みをいただいて、旭川・美瑛に立ち寄ってきました。
ちなみに、有名な白金青い池。すごくないです?本当にこんなに青いんです。

おかげさまでだいぶリフレッシュ。またお仕事がんばれそうです。
「二刀流 緩和ケア医の頭の中」は、病院と在宅の二つの現場に立ち、自身もがん患者である緩和ケア医・廣橋猛が、日々考えていることや公には言いにくい本音を率直にお届けするニュースレターです。過去記事や毎月すべてのレターを受け取るには、サポートメンバーをご検討ください。
2026年6月の診療報酬改定で在宅医療も変わった
今年6月、在宅医療の仕組みが大きく変わったことをご存じでしょうか。
2年に一度、医療の公定価格である「診療報酬」が見直されます。今回の改定で、在宅医療、つまり医師が自宅を訪問して診療する医療のルールの1つに大きな変更がありました。
ニュースで報じられるのは病院の話題が中心です。在宅医療の変化は、あまり知られていません。
でもこの変化は、在宅医療を受けている方、そしてこれから親の介護などで検討する方の暮らしに、直結する話なのです。
「軽い患者をたくさん診て稼ぐ」時代の終わり
在宅医療では、月2回の訪問診療が標準的なスタイルとされてきました。
そして、これまでの仕組みでは、症状が安定した軽症の患者さんをたくさん抱え、一律に月2回訪問すれば、高い報酬が入りました。極端に言えば、重症の患者さんを診なくても経営が成り立つ。そんな在宅クリニックが少なからずあったのです。
今回の改定で、国はここにメスを入れました。
月2回以上の訪問で高い報酬を得るためには、診ている患者さんのうち、末期がんなどの重症患者が2割以上いなければならない。そんな条件が加わったのです。
さらに、特に手厚い体制を持つ医療機関への上乗せ報酬は約2倍に引き上げられました。ただしその条件は、医師3人以上の配置、緊急往診と看取りがそれぞれ年30件以上など、格段に厳しいものです。医師1人が診られる患者数にも、100人までという上限が設けられました。
国のメッセージは明確です。「軽症患者を囲い込んで稼ぐ時代は、終わりにする」と。
この方向性自体は、正しいと私は思っています。安定した患者さんに一律で、場合によっては必ずしも必要のない月2回の訪問を繰り返す医療のあり方には、私自身、長年疑問を抱いてきたからです。例えば血圧の薬だけ処方されている、ただ通院が大変なだけの患者に、月2回の訪問は絶対に必要とはいえないでしょう。
断られる患者、"欲しがられる"患者
しかし、制度が変わると、現場には思わぬ動きが生まれます。
まず心配なのは、軽症の患者さんが断られることです。重症患者2割以上という条件を保つために、「症状が安定しているうちの患者構成では厳しい」と、新規の受け入れを断るクリニックが出てくるかもしれません。これまで在宅医療を受けられた人が、居場所を失う可能性があります。
そして逆に、重症の患者さんは"欲しがられる"ようになります。
重症患者を診ることが条件の達成につながる以上、末期がんや難病の患者さんを「ぜひ紹介してください」と病院に求める在宅クリニックが増えるはずです。
一見、良い話に聞こえるかもしれません。重症でも家で診てもらいやすくなるのですから。
でも、ここに落とし穴があります。