AIは余命を答えた。でも、答えられなかったことがある
皆さん、こんにちは。
お盆休みはいかがお過ごしでしたか?帰省された方もいれば、何事もなく普通に仕事だった方もいるでしょう。
病院というのは不思議なもので、年末年始はお休みになりますが、お盆は通常体制のところが多いですね。というわけで、私も通常業務で、むしろ普段より多忙に過ごしていたかもしれません。いずれにせよ、夏バテしないように気をつけてがんばっていこうと思います。
というわけで、今日は過去には想像もしなかったAIと患者さんの関わりについてのお話です。
「二刀流 緩和ケア医の頭の中」は、病院と在宅の二つの現場に立ち、自身もがん患者である緩和ケア医・廣橋猛が、日々考えていることや公には言いにくい本音を率直にお届けするニュースレターです。過去記事や毎月すべてのレターを受け取るには、サポートメンバーをご検討ください。
「先生、これを見てください」
初めての診察の日。椅子に腰を下ろすより先に、木村さん(仮名)はバッグからスマートフォンを取り出しました。70歳の男性。肺がんの再発で、私の緩和ケア外来に紹介されてきた方です。
画面には、AIが生成した長い文章が表示されていました。病名、これまでの治療の経過。おそらくご自分で知っている情報を、そのまま打ち込んだのでしょう。返ってきた答えの一部が、スクリーンショットで残されていました。「生存期間の目安は、およそ半年」。
「調べちゃったんです。いけないことでしたか?」
木村さんは、少しおびえたような目で私を見ました。
私の印象に残ったのは、その表情です。木村さんが恐れていたのは、余命の数字そのものよりも、「勝手に調べたこと」を医師に叱られることだったのです。
調べるのは、当たり前のことです
正直に言うと、以前の私なら「ネットの情報は当てになりませんよ」と言っていたかもしれません。実際、今もそう言う医師は少なくないと思います。不確かな情報に振り回される患者さんを守りたい。その気持ち自体は、間違っていません。
でも、この言い方には問題があります。
まず、無理なのです。生成AIの答えの精度は格段に上がっていますし、スマートフォンを取り上げることはできません。診断名を聞いて家に帰れば、調べるまでに1時間もかからないでしょう。医師に渡された資料をそのまま写メで撮って、よく分からないところや知りたいことをAIに質問することもできます。「調べないでください」と言われた患者さんは、調べるのをやめるのではありません。調べたことを、医師に言わなくなるだけです。
そして、もっと心配なのはその先です。言えなくなった患者さんは、次に不安になったとき、AIにだけ相談して、診察室では口をつぐむようになります。AIは24時間いつでも応じてくれて、叱らないし、忙しそうな顔もしませんから。
だから私は、木村さんにこう言いました。
「調べますよね。気になりますものね。当たり前です。私だって、自分の身体のことなら調べます」
木村さんの肩から、力が抜けたのが分かりました。
もしあなたが、あるいはあなたの大切な人が、AIに病気のことを聞いてしまったのなら。それを後ろめたく思う必要は、まったくありません。
AIにできること、できないこと
では、AIが出した数字とは、どう付き合えばいいのでしょうか。