いつ死ぬか分かっていたなら
皆さん、こんにちは。
私は緩和ケアの専門医として、病院や在宅医療の現場で、多くの患者さんの最期に関わってきました。そんな中で、いつも考えさせられる「余命」についてのテーマで皆さんに伝えたいことがあります。
「まだ時間がある」と思っていたら
「あと半年くらいでしょうね。」
主治医から森田さんが告げられたのは、胃がんが再発したときでした。
60代の男性・森田さんは、家業の印刷会社を妻と二人で切り盛りしてきた、几帳面で誠実な方でした。
「半年」と聞いたとき、森田さんも家族も大きな衝撃を受けました。けれど同時に、「まだ半年あるんだ」と思ったともいいます。
それからの彼は、時間を大切に過ごそうと決めました。週に一度は家族そろって外食をし、孫の運動会にも足を運びました。しかし、仕事や子育てに追われる家族たちとは、なかなか予定を合わせられず、「本当にやりたいこと」は、つい後回しになっていきました。
そんな中で、彼にはずっと行きたい場所がありました。
以前、知人から「とても良かった」と聞いていた山あいの温泉。「体調が落ち着いたら、春頃にでも行こう」と、息子さんと相談して数ヶ月先に宿の予約を入れたのです。
一方で、森田さんは会社の事務を一手に担っており、伝票整理や口座管理、大切な書類の保管場所など、 誰も把握していない仕事が山ほどありました。
「体調がもう少し落ち着いたら、引き継ぎを進めよう」
そう考えながら、日々を過ごしていたのです。
ところが、三ヶ月ほど経った頃、日を追うごとに体調が悪化していきました。食欲が落ち、動くと息が苦しくなる。検査の結果、がんが急速に進行していたのです。
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