入院したら、痛み止めを取り上げられた
皆さん、こんにちは。緩和ケア医の廣橋猛です。
病院と在宅の二刀流で、つらい病気の患者さんやそのご家族などと関わっています。
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家では、目の前にあったのに
夜中の2時。痛みで、目が覚める。
ナースコールを押す。しばらくして、看護師さんが来る。「痛いですか。お薬、お持ちしますね」。
そして、待つ。
15分。夜勤帯だと、30分待った、という話も珍しくありません。その間、痛みは燃え広がっていきます。
これは、どこの病院でも起こりうることです。そして、ほとんどの患者さんが、「病院だから仕方ない」と思っている。
でも、考えてみてください。
入院する前、家にいました。家では、痛み止めは手元にあったのです。それこそ、目の前に、何回分も。痛いなと思ったら、手を伸ばして、すぐ飲めた。
ところが、入院した途端、その薬は手元から消えました。
痛みを和らげるために入院したのに、家にいた時より、痛み止めが遠くなった。
笑い話のようで、笑えない。でもこれが、現実に、毎晩、あちこちの病院で起きていることなのです。
なぜ、こんなことになるのか。少し、仕組みの話をさせてください。
がんの痛みに使う医療用麻薬は、法律で厳重な管理が義務づけられています。病棟では、鍵のかかる金庫に保管されます。患者さんが「痛い」と言うと、看護師は金庫を開け、数を数え、記録をつけ、二人で確認してから、薬を持ってくる。これは、病院が勝手に決めたルールではないのです。
だから、時間がかかる。看護師さんが怠けているわけではありません。むしろ、忙しい夜勤で他の患者さんの対応もしながら、この手順を踏んで届けてくれている。夜勤帯は看護師の人数が少なく、ナースコールが重なれば、順番を待つことになる。金庫のある詰所と病室が遠ければ、往復の時間もかかる。人が少なければ二人で確認にも時間がかかる。手順と人手と距離。それが積み重なって、15分、30分になるのです。
それでも、患者さんにとっての現実は、変わりません。「痛い」と伝えてから、薬が口に入るまで、15分、30分。
以前この場所で、痛みは火事と同じだと書きました。ボヤのうちに水をかければ、少しで消える。燃え広がってからでは、同じ水をかけても、すぐには消えない。
金庫の仕組みは、ボヤで済むところをを、火が燃え広がるまで待たせているのです。
では、どうすればいいのか。私は、答えを持っています。でも、その答えは、病院の中で、いつも歓迎されるわけではありません。