「もう限界…」と感じる前に 看病疲れを防ぐための3つのコツ
そう思う人は、本当にたくさんいます。でも私が出会ってきたご家族の多くは、もう十分すぎるほど頑張っているのです。
みなさん、こんにちは。
緩和ケア医の廣橋猛と申します。私は普段、進行がんなど、重い病を抱えた患者さんやそのご家族と多く関わっています。その中でどのように看病したら良いかというお悩みをよく聞きます。
この連載では、緩和ケアの専門医として、専門的な知識と実際の患者さん・家族の体験をもとに、看病の工夫や看取りの心得、死別後の心のケアまで具体的なケースをご紹介しながら、分かりやすくお伝えします。良い看病を実現させ、後々の後悔を少なくするための「処方箋」をお届けします。
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佐知子さんのケースから見える"がんばりすぎ"の現実
「先生、私もう、どうしたらいいか分からないんです・・・」
緩和ケア外来の一角で、声を震わせながら佐知子さんは言いました。彼女は50代の会社員。大腸がんで抗がん剤治療を続ける母親と同居しています。

お父さんは数年前に亡くなり、兄弟は遠方に暮らしているため、日々の看病や通院の付き添いは佐知子さん一人が担っていました。
お母さんは抗がん剤の副作用で手足のしびれがひどくなり、1人で外出するのが困難に。病院へは車椅子を使って通院する必要があり、そのたびに佐知子さんは仕事を遅刻や早退したり、休みを取って付き添っていました。スケジュール調整、上司への説明、同僚への気遣い・・・。そんな日々が何ヶ月も続いていたのです。
「母に『迷惑かけてごめんね』って言われると、私もつらくて。でも、しんどいとも言えなくて・・・」
実は、佐知子さんのお母さんも、かつては夫(佐知子さんの父)の看病を何年も続けた人でした。そのときは文句一つ言わずに付き添い、献身的に尽くしていたのを佐知子さんは覚えています。けれど、父が亡くなったあと、どこか力が抜けたように、今では娘である佐知子さんに頼りきりになっている印象がある。そんな母に対して、苛立ちのような感情が芽生えることもありました。
「母が大変なのはわかってるんです。でも、私だって・・・って思ってしまうことがあって。そんな自分が嫌になるんです」
佐知子さんは、母の体調を案じつつも、自分の限界が近づいていることを感じていました。「ちゃんとやらなきゃ」「私が頑張らなきゃ」と自分に言い聞かせていたものの、心も体もすり減っていたのです。
そしてある日、ついに体調を崩して会社を休むことに。そこで初めて、「このままでは自分が先に倒れてしまう」と気づいたと言います。
ひとりで抱えていませんか?~あなたの心の中にある"しんどさ"~
看病や介護の毎日は、目には見えにくいストレスの積み重ねです。
「気を抜くと"サボってる"と思われそう」
「誰にも相談できないまま、ただ時間だけが過ぎていく」。
「自分のことはいつも後回し」
そんなふうに感じていませんか?
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- 看病疲れを防ぐために、いますぐできる3つの工夫
- あとから「もっと早く知っていれば」と思わないで
- 佐知子さんが取り戻したもの
- 完璧じゃなくてもいい ~頑張っているあなたへのメッセージ
- 次回予告
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